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トヨタが焦り EVへの対抗心 [経済ニュース]

 電気自動車(EV)を巡り、「エコカー王者」のトヨタ自動車が思わぬ“誤算”に見舞われた。トヨタはEV普及に懐疑的だったが、販売はここにきて盛り返しており、次世代エコカーを巡る覇権争いに名乗りを上げているのだ。トヨタは先月、燃料電池車(FCV)の量産モデルを公開した。通常の新型車に比べて異例の早期発表は、EVの巻き返しに慌てたトヨタの“牽制(けんせい)球”だとの見方も浮上している。

 ■王者の自信

 「FCVが普通の車になるための、長いチャレンジの始まりだ。電動化の流れを作った平成9年発売のハイブリッド車(HV)『プリウス』を世に問い、車の当たり前に育てた自負がある」

 先月25日、公開した市販モデル車を前に、トヨタの加藤光久副社長はこう胸を張った。

 FCVは水素と酸素の化学反応で発生した電気でモーターを回す仕組みで、排出するのは水のみだ。しかも、約3分で水素の充填(じゅうてん)を完了し約700キロを走行できる。走行距離はEVの約3倍に相当し、長距離走行での優位性は高い。

 水素を充填する「水素ステーション」などのインフラ整備は課題として残るものの、トヨタは間近に迫った「FCV元年」をアピールし、次世代エコカーの本命はFCVだとの揺るぎない自信を示した。

 さらに加藤副社長は、当初、平成27年中としていた発売時期を「今年度中」に修正するとともに、「1000万円を切るレベル」としていた価格も、同社の高級車「レクサス」並みの700万円まで下げることも表明した。世界初の市販化を早期に発表し、政府との購入補助金の価格交渉、自治体のFCV購入に向けた来年度の予算確保を確実にする考えだ。

 ■対抗心あらわ

 「航続距離が短い」「電池のコストが高い」「充電時間が長い」「急速充電インフラ整備が必要」-。

 この日の会見でトヨタは、発表資料にEVの課題を列記し、FCVの比較優位性を訴えた。電池切れの心配がないプラグインハイブリッド車(PHV)の可能性は認めつつも、EVは「近距離用途に適したクルマ」と用途の制限を明記したほどだ。

 これまでトヨタはEVに対し、あえて無視を決め込んできたが、対抗心をあらわにした。その理由について、自動車業界からは「トヨタの焦りではないか」との見方が根強い。

 すでにノルウェーではEVに対する手厚い税制優遇の恩恵で、今年3月には新車販売台数におけるEVの割合が25%に達した。中国では、日産自動車の中国合弁会社「東風日産」が9月に発売する「e30」を、大連市が年末までに1000台購入し、公用車やタクシーとすることを決めている。

 また、日本でもEV普及の課題だった充電設備の設置が進む。今年末までに急速充電器、普通充電器合わせて計1万7000基(3月末時点では5000基)に拡大する見込みだ。

 さらに、自動車市場の中心となる米国では、カリフォルニア州が定める「ZEV規制」がEVの普及を後押しする。同州内で販売する新車台数の1割強を、ZEV(ゼロエミッションビークル=無公害車)にするようメーカーに義務付ける州法だ。

 18年以降は現行12%の無公害車比率が16%に引き上げられ、対象外だった中堅メーカーにも規制が適用される。中堅の富士重工業、マツダなどは、技術やインフラなど課題の多いFCVよりも、PHVや天然ガス車、そしてEVにより同規制に対応するとみられる。

 ■じわり転換

 EV普及の下地が整い、国内外でFCVよりもEVを採用する動きがさらに広まれば、トヨタにとって想定外の出来事だ。その危機感が、発売の半年以上前というFCVの早期発表に動いた背景との見方もある。

 トヨタもEVの自社開発を進め、限定発売を行っている。ただ、現在も販売の中核をなすHVを押しのけてまで、EVを発売するメリットは薄いとトヨタは判断してきた。

 「マンションなどで充電設備を作っても、充電時間が長く奪い合いになる。現実的には普及が難しい」

 トヨタ幹部は経営判断の理由のひとつをこう説明する。だが、低迷していたEVが本格普及に転じれば、HVで築き上げた地位を日産などに脅かされるだけでなく、経営判断の誤りとのそしりも免れない。

 こうした中で、トヨタの発言にも微妙な変化が出てきた。FCVの発表会後にある幹部は、「FCVは、次世代エコカーの主流のひとつだ」と述べた。FCVを次世代エコカーの“本命”としてきた従来の姿勢から転じたとも受け取れる。(飯田耕司)
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